コーヒー抽出・ドリッパー編・V60
今回は、ペーパードリップの世界で一番親しまれ、愛用されているといっても過言ではない、HARIO「V60・01」にフォーカスして、ドリップ方法のポイントを解説してみたいと思います。
ドリッパーの構造
ドリッパーの出口、リブ。このふたつにコーヒーを美味しくするための、周到な戦略を練りこんだ、ハリオV60。ここからマニアックな分析をしていきましょう。
革命的だったのは出口
V60の革命は、コーヒー液が最後にサーバーへと落ちる出口を大きくしたところです。それまでの出口は直径5~10mm程度の小さな穴でした。それを1.5倍の15mmほどに広げることでフィルター内のコーヒーの湯だまりを解消し、すっきりとした味わいに変化させることに成功しました。
また、大きくなった穴は抽出スピードの柔軟さも拡大しました。ゆっくりお湯を落とせばゆっくりと、早くお湯を落とせば早く、抽出する側の思考を反映させることが可能になったことで、同じコーヒー豆を使っても個性を出しやすくしたのです。
リブをらせん状に
V60は、リブをらせん状に、右回り(時計回り)に配置しています。なぜ右回りなのかはわかりませんが、ハンドドリップではよく「のの字を書くように」という言葉が用いられます。筆者の推測によると、お湯の落とし方の説明に用いられるこの「の」の字が右回りなためではないかと考えています。「の」の字の右回りをアシストするように、リブのらせんが右回りに設置されていることで、お湯の回転をスムーズにします。スムーズなお湯の回転は、コーヒー粉への湯の浸透をよりスムーズにするので、同じ「の」の字でもより濃厚に抽出することが可能になります。
リブを最上部まで
コーノ式は、リブを途中までにして、ドリッパー上部に湯だまりを敢えて作ることで、コーヒーの灰汁(アク)部分を下に落とさないという思想で作られていました。
V60は敢えて、ドリッパー最上部までリブを設置することで、湯だまりを極力作らない思想を採用し、可能な限り抽出を早くすることを重視しました。この思想は、コーヒーの味を損なうマイナス成分は、ドリップの前半は抽出されにくいというデータに起因しています。マイナス成分が出始める、「3分」までに抽出をスムーズに終えれるようにという考えのもとに、最上部までのリブを採用しました。
おススメのサイズは01だけ!?
V60・01は大変優秀で、ぴたっとハマるとペーパードリップ最高のクリアさと香味の抽出を実現してくれるのですが、ぴたっとハメることが難しいドリッパーです。その理由は先述したように、淹れ手の機微を反映してしまうからで、毎回まったく同じ抽出をしない限り安定した抽出ができません。
1日に2回程度のドリップ回数ですと、安定した味を保つのが正直難しい。さらには、V60・02と03サイズは、コーヒーの層が分厚くなり、理想の3分抽出はなにかを犠牲にしないとできません。ですので、3杯、4杯と大量抽出をするときは01を複数個使って抽出する必要があります。
V60の抽出手順
1杯・150cc抽出の分量は、豆(中挽き)12~15g。2杯・300cc、豆(中挽き)20~24g。中深煎り豆を使用。85~91℃のお湯で抽出。
①ドリッパーにペーパーをセットする(ペーパーに湯をかける必要なし)。
②ペーパーに豆を入れてトントンして平らにならす(粉を指で押しならす必要なし)。
③湯を中心から「の」の字を書くように回しかける。お湯を粉に乗せるような気持ちでやるといい。中心から2/3ほどまでいったらやめる。端まではかけない。
蒸らし
蒸らしのお湯を注ぎはじめからカウントして30秒ほど経ったら、一投目。この一投目をいれるときに、ぽたぽたとコーヒー液が落ちていたら蒸らしは適切。ツーっと流れていたら多すぎ、まったく落ちていなかったら少なすぎ。
一投目は中心に向かって真上から垂直にじっくりお湯を落とします。お湯はほぼ動かさず、動かしても1円玉程度の範囲内で。使用する豆のグラム数の秒数を数えるといいでしょう。
2投目、3投目で目的の抽出量の1/2から2/3の量を抽出しましょう。ここからはお湯を中心に垂直というより、中心から500円玉くらいの範囲で回しかけましょう。4~6投目で目的量抽出して完成です。
まとめ
ハリオ・V60についてあれこれ述べてきましたがいかがだったでしょうか。ご自宅にV60をお持ちの方は非常に多いかと思います。V60をお使いの方に少しでも参考になれば幸いです。
BON COFFEE’s Master
静岡大学卒業後、2009年に地元福井駅前にて「BONCOFFEE」を、2015年に豆販売に主軸をおいた2号店「BONCOFFEE -BEANS STORE-」を開業。2020年、福井駅前再開発事業にともないビーンズ店を板垣に移転し現在に至る。モットーは「1杯のコーヒーのチカラで世界を少しまったりさせる」。作り続けたいコーヒーは、子供からお年寄りまで誰もが気軽に楽しめるコーヒー。コーヒーが飲めなかった人がBONCOFFEEのコーヒーなら飲めた、ブラックで飲めなかった人が飲めるようになったとの声多数。
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