コーヒーミルのはなし
「そうだ、コーヒー飲もう」と思った時、目の前にあるコーヒー豆を粉にしなければいけないですよね?粉にする行為を、「挽く」、「グラインド」などといいます。豆を挽くという工程は、普段軽く考えられがちですが、コーヒーの味を大きく左右する大事な部分なのです。今回はこの「挽く」にフォーカスしてみたいと思います。
ミルの構造
固体を粉体にするには、「コーヒーミル」という機械を使います。コーヒーミルを構造上からカテゴライズすると、「すりつぶす・挽く」、「切る」というおおまかに2つの分類が成り立ちます。
フラット式
すりつぶして、挽くタイプのコーヒーミルです。「臼式」というミルの構造になっています。
歯の形状は、「カットタイプ」と「グラインドタイプ」の2つに分類されます。どちらも、2枚の歯の間を内から外に向かっていくにしたがって粒度が小さくなり、最終的に設定した粗さになって外へ出ます。
~グラインドタイプ~
臼式の中でも、「グラインドタイプ」の良い点は、粉一粒の立体構造が複雑になることで、断面積が増え、それにより水分子の浸透が活発になります。水分子=お湯の浸透が活発になるということは、よりコーヒーの成分を抽出しやすくなることにつながります。そのため、厚みがあって濃厚な、しっかりした味わいのコーヒーに仕上げやすくなります。
デメリットは、一粒ごとの粒度がばらつくことです。「臼式・グラインドタイプ」の家庭用コーヒーミルにおける最上位機種である、フジロイヤルの「みるっこ」でも、粒度の差は目視でわかるほどです。
粒度が小さければ、成分の抽出が過剰になり旨味成分も増えます。しかし、本来あまり目立ってほしくなかった雑味成分も同時に増えます。反対に粒度が大きければ、成分の抽出力全体が弱くなるので、味気ないものになっていきます。
このようなことから、粒度の安定は非常に重要です。「グラインドタイプ」のメリット、デメリットは、表面積が増えることで成分の抽出パフォーマンスが上がることと、粒度のばらつきにより、狙っていない味になってしまう可能性があるということです。
~カットタイプ~
カットタイプを代表する家庭用ミルにカリタの「ナイスカット」というものがあります。今は後継機でハイグレード機種の「ネクストG」というタイプがでています。これらのタイプの歯は、カットタイプというだけあって、「すりつぶしながら切る」構造になっています。中心から放射状に歯が外に伸びていて、外にいくほど隙間が狭くなり、設定した粒度で挽けるようにできています。
カットタイプのメリットは、粒度がグラインドタイプに比べてそろいやすいので、粒度による抽出のばらつきが少なく、味の検証に粒度の差を外せること。
デメリットは、グラインドタイプに比べて一粒あたりの表面積が小さくなる分、成分の抽出が若干弱くなる傾向があることと、状況によってはメリットともいえますが、ばらつきがない分、複雑さよりすっきり感の強いコーヒーになりやすいことがあげられます。
コニカル式
円すい、すり鉢のような形です。内と外に刃があり、外刃は固定され、内刃が回転します。内外の隙間の具合で粒度を設定します。エスプレッソマシーンを主体に使う欧米では、コニカル式が多いです。
粉を押し固めるエスプレッソの抽出は、粒度の不揃いが抽出時間に大きく影響し、そのばらつきは味のばらつきともイコールになるためです。
人為の及ぶ行為の少ないエスプレッソの抽出において、抽出時間は味を決める重要ポイントで、その抽出時間は、使用する豆の量と、粒度でコントロールしています。そのため、より均一で、微粉の少ないコニカル式が重宝されています。
要注意、プロペラ式
フードプロセッサーのような、本体の底に回転する刃が付いているタイプです。これは、とある例外を除いて、絶対におすすめしません。
理由は簡単、刃に当たった豆しか切られないことと、狙った粒度に到達した粉が外に出れずさらに細かく切り刻まれ続けるからです。
味の安定もあったものではありません。手挽きから電動ミルへ乗り換えるときに安価なため一番犯してしまいがちな過ちです。電動への乗り換えの一番の理由が値段であるなら止めませんが、クオリティを少しでも求めるならやめておきましょう。
結局一般的なフラット式を買うか、手挽きに戻るか、挽くこと自体面倒になり、お店で挽いてもらうことになってしまいます。
前述で、とある例外といった唯一の例外は、細挽きウェルカム。パンチのあるコーヒー以外はコーヒーじゃない!というタイプの方です。僕のお店、BONCOFFEEの常連さんでもいますが、はっきりこう断言できるタイプの人は問題ないようです。
知っておきたいその他のポイント
豆を挽くポイントには、これまで述べてきたこと以外にも注意するポイントがあるのでご紹介します。
~摩擦熱~
粉砕される際の、豆の摩擦熱による一瞬の温度は500~1000℃にまで達するという説もいわれるくらい、摩擦熱は発生し、その高温が豆に悪影響を及ぼしていると思われます。
しかし、長年さまざまなコーヒーミルを使ってきた経験上でいうと、一瞬の摩擦熱の豆への影響はそれほど大きくはありません。摩擦熱よりも、長時間連続で使用した場合の刃自体の温度に気を付けるべきだと思います。
コーヒー1杯分の豆を3~5秒程度で挽いてしまう高性能ミルの場合、10秒以上連続で挽き続ける場合は、こまめにスイッチを切り、少しでも熱の発生を抑えましょう。
~微粉~
微粉は、砕くという性質上必ず発生します。微粉が味を損ねるという主張はよくみますが、微粉が全くないコーヒーには面白さがないともいえますので注意が必要です。また、焙煎豆自体の雑味などのマイナス要素は、微粉の問題以前の場合がほとんどなので、その点も注意してください。
まとめ
今回は、複雑怪奇なコーヒーミルのおはなしでした。インターネット上にはあらゆるタイプのコーヒーミルがありますが、僕の経験を踏まえて整理し、分析しておはなししました。
コーヒーミルを選ぶ際の、考え方の参考になれば幸いです。
BON COFFEE’s Master
静岡大学卒業後、2009年に地元福井駅前にて「BONCOFFEE」を、2015年に豆販売に主軸をおいた2号店「BONCOFFEE -BEANS STORE-」を開業。2020年、福井駅前再開発事業にともないビーンズ店を板垣に移転し現在に至る。モットーは「1杯のコーヒーのチカラで世界を少しまったりさせる」。作り続けたいコーヒーは、子供からお年寄りまで誰もが気軽に楽しめるコーヒー。コーヒーが飲めなかった人がBONCOFFEEのコーヒーなら飲めた、ブラックで飲めなかった人が飲めるようになったとの声多数。
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