コーヒー豆の保存って?
こだわりの自家焙煎屋さんで購入した、高品質のコーヒー豆。みなさんはどう保管していますか?「湿気に弱いから絶対冷凍したらダメ」とか、「茶筒が一番だよ」などなど。何を信じていいのかわからない人って意外と多いのではないでしょうか。
今回はコーヒー豆の保存方法の決定版。もう明日から悩まない、保存方法のおはなしです。
豆の劣化は3パターン
コーヒー豆は時間が経つと酸化して不味くなる。コーヒーを飲む人の多くにとって常識的なはなしですが、これはあくまでも3つのうちの1つのパターンなのです。焙煎後のコーヒーがどのように劣化していくのか、劣化の3パターンについて詳しくみていきたいと思います。
酸化
コーヒーの生豆は種子なので、ゴマ油やオリーブ油などと同様、油脂分が多く含まれています。また、焙煎後のコーヒー豆は豆の繊維が膨らみ、さらに脆くなっているため、油脂分が外に出やすくなっています。
深煎りの豆だと、焙煎中ですでに豆に油がコーティングされている状態です。浅煎りの豆の場合1年経っても出てこない豆もありますが、ごく一般的な焙煎度である、中煎り~中深煎りの焙煎豆の場合、焙煎後3~7日ほどで豆内のオイルが滲んできます。この油脂分(脂肪酸)が空気に触れることでいわゆる「酸化」が起き、味の劣化を招きます。
油の酸化した匂いがピンとこない人は、使用後、長期間放置しておいたてんぷら油を思い浮かべて下さい。あの傷んだ油の嫌な臭いが、空気による酸化の臭い(酸敗臭)です。
香り・ガスの消失
焙煎したてのコーヒー豆にお湯を落とすと、ムクムクと膨らんでいきますよね。砕いた豆の内部にお湯が浸透することで、そこにあった炭酸ガスが外に出ていき、膨らんでいくのです。このことからもわかるように、砕く前の焙煎豆には大量のガスが詰まっています。揮発性の高い香り成分も同じように詰まっています。炭酸ガスと揮発性の香り成分は、砕かなくても徐々に豆から外に漏れだしています。焙煎から時間が経ったコーヒー豆が、お湯をかけても膨らまなくなるのはこのためです。
膨らみの悪いコーヒーはお湯の浸透具合も悪く、それによりコーヒー成分の抽出効率も格段に下がるため味が悪くなります。また、膨らまないということは、上質なコーヒーに不可欠な香り成分も飛んでしまっているので、凡庸なコーヒーに成り下がってしまいます。
膨らむ豆がすべて美味しい豆であるかどうかには整合性がありませんが、豆の鮮度との相関関係は確実にあるといえます。
ただし、焙煎したての豆でも保管方法に難がある場合、急速に劣化が進みますので注意が必要です。特に高温多湿の状態で放置した場合は、焙煎したての豆でも膨らみが悪くなります。
さらに、挽いた豆の場合、挽いた瞬間から急速にガス・香りが抜けていきます。焙煎したてでも膨らみが悪くなります。
また、浅煎りのコーヒー豆は初めから炭酸ガスの包含量が少ないので膨らみません。中煎り~深煎りの豆に該当する点であることは、覚えておいてください。
吸湿
乾燥した状態にある焙煎豆は、水分子との反応で急速に湿気ります。僕の経験でいうと、イベントなど野外で1日中ドリップしていると朝と夜では味の変化を感じます。
密閉瓶に容れておいても開け閉めを頻繁に繰り返すことで外気に触れやすく、湿気っていくのです。これは、クロロゲン酸などが加水分解され、焙煎前の生豆の状態に戻ってしまうことでpHが低下して酸を感じやすくなることが原因です。
抽出後、ホットウォーマーなどで保温し続けたコーヒーが酸っぱくなるのもこのためです。
おススメの保存方法
劣化のパターンがわかったところで、実際の保存法について解説します。
基本の考え方
最適な保存方法の解は、3つの劣化のパターンを整理すれば自然とみえてきます。
ポイントは「砕かず豆のままで、高温多湿を避け、密閉して保管する」というこの2つ。
この条件を守れるのなら、常温でも焙煎後1週間以内に飲んでしまうのなら大丈夫です。
1週間が現実的でない方は、密閉して冷蔵庫で保管しましょう。適切に焙煎された豆なら、1ヶ月程度は香味がもちます。
もし、それ以上飲み切るのに時間が掛かる場合は、購入後速やかに冷凍庫へ。密閉して冷凍保存した場合、半年程度は香味が安定します。
挽いた豆・コーヒー粉
コーヒー豆は挽いた瞬間から急速に、ガス・香りが消失します。もし店頭にて挽いてもらった場合は、なるべく早く密閉して冷凍保管してください。
いつ挽いたのかわからないコーヒー粉は、残念ですが諦めるよりないかもしれません。
まとめ
いろいろと綴ってきましたがいかがだったでしょうか。生産農家から焙煎屋を経て渡ってきたバトンですが、その保管方法次第で、すべてを台無しにしてしまうかもしれませんので、この記事を踏まえて素敵なコーヒーライフを送ってくださいね。
BON COFFEE’s Master
静岡大学卒業後、2009年に地元福井駅前にて「BONCOFFEE」を、2015年に豆販売に主軸をおいた2号店「BONCOFFEE -BEANS STORE-」を開業。2020年、福井駅前再開発事業にともないビーンズ店を板垣に移転し現在に至る。モットーは「1杯のコーヒーのチカラで世界を少しまったりさせる」。作り続けたいコーヒーは、子供からお年寄りまで誰もが気軽に楽しめるコーヒー。コーヒーが飲めなかった人がBONCOFFEEのコーヒーなら飲めた、ブラックで飲めなかった人が飲めるようになったとの声多数。
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